休み時間にマヒロがやってくるのではないかとカケルは身構えていたが
マヒロはカケルの存在を忘れたかのように振舞っていた。
そして、3時間目の音楽の授業を受けるために教室を出たカケルは、暗く
よどんだ冷たい視線を背中に感じた。
「おい! カケロー! 何だよさっきのは!!」
案の定マヒロたちで、カケルを取り囲み同じ歩調で歩き始めた。
「ボクはカケルだー・・・ってふざけんなよなー。
カケロ!! そして今からカケタにしてやる!」
いつもよりもスゴんで見せる。
「あの人、前の学校で名前のことでいじめられていたの。」
ユナの言葉を思い出した。
すぅ〜っと息を吸い込む。
(もう、負けない!!)
校舎と校舎の渡り廊下でカケルは立ち止まり、真正面からマヒロを見据えた。
「人の名前をからかって、一体何になるんだ!」
マヒロは、口元をひきつらせて2,3歩下がった。
「何だよ、エラそうに!! カケタのくせに!!」
「もうやめてくれないかな、マヒロ」
カケルは、そわそわと落ち着きをなくし始めたマヒロを、さらに目に力を
こめて見つめ続けた。
「くっそぉーーーっ!お前なんか、お、お前なんかこうしてやる!!」
マヒロはいきなり右のこぶしをカケルめがけて振り下ろした。
カケルはとっさに両手で頭をガードした・・・。
おかしなことに次の瞬間、マヒロは自分の頭を思い切り殴っていた。
!( ̄∇ ̄ ;)えっ?
「うっ・・・ちくしょう!!」
マヒロはまたこぶしを振り上げ、また自分を殴った。
「ちくしょう! くっそーー!一体何なんだぁ!!」
何度やっても、結果は自分の頭を殴ることになってしまう。
マヒロはパニックに陥り、大声で叫びながら自分の頭を殴り続けた。
やがて騒ぎを聞きつけた男の先生が、野次馬たちを押しのけて、マヒロを
止め、泣き叫ぶマヒロをどこかに引きずって行った。
カケルも野次馬の生徒たちも、あっけにとられ呆然と見つめていた・・・。
ふと気が付いて、他の生徒と共に音楽室へ向かう中、ふとユナとケルンが
くすくす笑う声を聞いたようにな気がした。
−−−−−−−もしかして・・・?
ユナとケルンが助けてくれた?
「見直したわ、天原くん」
振り返ると、本宮マミだった。
その隣りにいる女子も、後ろの女子も、カケルに笑顔を向けた。
「案外やるじゃない!」
「いや・・もうやめてほしかっただけだよ」
「でも、どうしちゃったのかしらね、篠山くん・・」
「さあ・・・」
本宮マミは、ふと笑いかけると先に歩いて行った。
やるだけのことはやった。
マヒロは果たして、もうやめてくれるだろうか・・・・。
すがすがしい気持ちと不安な気持ちが交互に押し寄せる。
マヒロは、結果的に自分自身を殴っていたけれど、暴力を振るおうとしていた
・・・・これからもっとひどいことになりはしないかと、カケルはふいに怖くなった。
その時!!
「あ、あれ・・・・篠山くん?」
女子が突然、叫んで窓を指差した。
音楽室とは反対側の校舎の屋上に、小さな人影が見えた。
黒いTシャツと灰色のズボンと髪の感じから察して、やはりマヒロのようだ。
まさか・・・・自殺!?
カケルは思わず音楽室を飛び出した。
物語☆ の記事一覧
09/10.Mon10:59
「ぶあぁ〜ん!! カケル・・ざあぁ〜ん!!」
「なぜ、そんなに泣くんだよ、ケルン」
・・・・・・・・なぜかは、わかっているけれど。
「カケルさあ〜ん、がんばってくださいよぅ!!」
パジャマのそでで涙をふいて、カケルは明るく笑った。
「ありがとう、ケルン、がんばってみるよ。」
そして、カケルは初めてケルンを抱き上げた。
ティッシュでケルンの涙をふいてやり、ぎゅっと抱きしめる。
長い長い間忘れていた、すがすがしい気持ちだった。
ケルンは案外、ふわふわな毛並みだった。
・・・・・・・思い出した。
カケルがユナに、お手伝い券のケルンをくれよんで描いた時、ユナがギュッと抱きしめた時、ふわふわだったらいいなーーと願ったことを。
ケルンのそのふわふわしたぬくもりは、カケルの中の勇気を確かなものに
したのだった。
6年1組の開け放たれたドアから教室に入り、自分の席にランドセルを置いたカケルに、さっそくマヒロが歩み寄る。
「おはよーー、カ ケ タくん!」
わざとゆっくり大きな声で言いながら、マヒロはカケルの机の両端に片方ずつ手を置き、ランドセルを見つめたままのカケルの顔を、横からのぞきこむ。
「早くカケロよ!」
そして左右に首を振りながら叫ぶ。
「そしたら、カケチャッタ君になるからさーー!!」
教室は、シーーンと静まり返った。
カケルとマヒロを全く見ないようでいて、全神経を2人に集中させている。
その、イヤな雰囲気・・・・・。
カケルは、もう一度自分の中の勇気を確認した。
「お兄ちゃん!」
「カケルさんっ!」
ユナとケルンの姿を心の中でしっかり抱きしめ、カケルはマヒロをキッとにらみ、ガタン!とイスから立ち上がった。
いつものようにカケルは何も言わないだろうとタカをくくっていたマヒロは不意をつかれて明らかに動揺していた。
「ボクの名前はカケルだ! ヘンな呼び方をするな!」
すると、マヒロはカケルの視線から逃げるように顔をそむけ、
「フン!」
と自分の席に戻って行った。
クラス全員、驚いた表情でカケルを見ていた。
・・・やがて担任がやって来て、ホームルームが始まった。
カケルはやっと、小さく息を吐き出した。
心臓が飛び出すのではないかと思うくらいにバクバク打っている。
「言えた!」
マヒロのあの驚きぶり!
カケルは、目を閉じて息を整えた。
・・・・・まだまだ、これで終わりじゃない。
そっと左から3列めに座っているマヒロを見ると、左のこぶしを握りしめて
悔しそうに歯をくいしばっている。
でも、ボクは負けない!!
カケルは、大きく息を吸い込み、黒板を見据えた。
「なぜ、そんなに泣くんだよ、ケルン」
・・・・・・・・なぜかは、わかっているけれど。
「カケルさあ〜ん、がんばってくださいよぅ!!」
パジャマのそでで涙をふいて、カケルは明るく笑った。
「ありがとう、ケルン、がんばってみるよ。」
そして、カケルは初めてケルンを抱き上げた。
ティッシュでケルンの涙をふいてやり、ぎゅっと抱きしめる。
長い長い間忘れていた、すがすがしい気持ちだった。
ケルンは案外、ふわふわな毛並みだった。
・・・・・・・思い出した。
カケルがユナに、お手伝い券のケルンをくれよんで描いた時、ユナがギュッと抱きしめた時、ふわふわだったらいいなーーと願ったことを。
ケルンのそのふわふわしたぬくもりは、カケルの中の勇気を確かなものに
したのだった。
6年1組の開け放たれたドアから教室に入り、自分の席にランドセルを置いたカケルに、さっそくマヒロが歩み寄る。
「おはよーー、カ ケ タくん!」
わざとゆっくり大きな声で言いながら、マヒロはカケルの机の両端に片方ずつ手を置き、ランドセルを見つめたままのカケルの顔を、横からのぞきこむ。
「早くカケロよ!」
そして左右に首を振りながら叫ぶ。
「そしたら、カケチャッタ君になるからさーー!!」
教室は、シーーンと静まり返った。
カケルとマヒロを全く見ないようでいて、全神経を2人に集中させている。
その、イヤな雰囲気・・・・・。
カケルは、もう一度自分の中の勇気を確認した。
「お兄ちゃん!」
「カケルさんっ!」
ユナとケルンの姿を心の中でしっかり抱きしめ、カケルはマヒロをキッとにらみ、ガタン!とイスから立ち上がった。
いつものようにカケルは何も言わないだろうとタカをくくっていたマヒロは不意をつかれて明らかに動揺していた。
「ボクの名前はカケルだ! ヘンな呼び方をするな!」
すると、マヒロはカケルの視線から逃げるように顔をそむけ、
「フン!」
と自分の席に戻って行った。
クラス全員、驚いた表情でカケルを見ていた。
・・・やがて担任がやって来て、ホームルームが始まった。
カケルはやっと、小さく息を吐き出した。
心臓が飛び出すのではないかと思うくらいにバクバク打っている。
「言えた!」
マヒロのあの驚きぶり!
カケルは、目を閉じて息を整えた。
・・・・・まだまだ、これで終わりじゃない。
そっと左から3列めに座っているマヒロを見ると、左のこぶしを握りしめて
悔しそうに歯をくいしばっている。
でも、ボクは負けない!!
カケルは、大きく息を吸い込み、黒板を見据えた。
* テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学 *
08/09.Thu17:52
いきなり、カケルはまた草原にいた。
草の匂いと風が心地いい。
そしてまた、いきなり目の前にユナが現れた。
ルビー2号を通しての壁の中のユナは、街で見かける同級生の女の子たちと
同じような服を着ている。
けれども、草原で会うユナは、白いワンピースを着ている。
「お兄ちゃんの中のイメージでしょ、これは。」
カケルが何も言っていないのに、すねたようにユナが言った。
そういえば・・・月の光の中で会った、あの時のユナのイメージ・・。
「あ・・うん・・そ、そうかな・・・。」
ユナは、肩をすくめた。
「ま、いいけどね、たまには。」
別に、ボクに合わせなくったって、好きな格好をすればいいじゃないかと
カケルは思った。
「そう? じゃ、私の好きにするわよ。」
また口に出して言わないのに、ユナは答えた。
そしてあっという間に、鮮やかな青いTシャツの上に白いレースのカーディガン、デニムのキラキラした刺繍のついたスカート、といった姿になった。
「ジャーーーン!! どうかしら?」
カケルはあっけにとられ、口をポカンと開けたまま突っ立っていた。
「お兄ちゃん、大丈夫? こっちの世界では、思っていることも全部
わかるの。心の中までガラス張りなのよ。」
えっ、まじ? ( ̄O ̄;)
聞いてないよ〜!!
「で、でも・・・ユナのことはわからないけど?」
「お兄ちゃんは、あっちの世界の人だから。」
ああ、そうですか! (`Д´)
「自分が考えていることは、相手にはわからないって思っているから。」
ここに来るといちいち、調子が狂うよ〜!!
あ!これも聞こえてるんだっけ?
えと・・え〜と・・・・
こんがらがっているカケルの心の声には今度は答えず、ユナは大きな木の
そばに、カケルの先に立って歩いて行く。
すると、いきなり白いテーブルとイスが2つ現れて、ユナがそのひとつのイスにすわり、もうひとつをカケルにすすめた。
「ここでないと、ゆっくり話せないから。通信はすぐ切らなくちゃならな いでしょう? 地上の悪想念は危険だし、規制もきびしいのよ。」
「規制とかあるんだ・・ユナ、大丈夫なの?」
「うん。だからほんの短時間。それでも直接話したいから・・。
大変なのよ〜、地上の時間をつかまえるのって。」
そんな大変な思いをして、ユナは通信を送っているのか。
そこまでして、直接話したいと思っているのか。
カケルは、胸があたたかくなった。
「でさ。お兄ちゃん、これからどうしたいの? 」
「これから? うん・・ボク、行ってみたいんだ、その月の姫神社に。」
するとユナは、真剣な表情になってカケルを見つめた。
「その前にさ、お兄ちゃんには、するべきことがあるよね。」
え? ( ̄O ̄;)
「その問題を解決しないと、お兄ちゃんは前に進めない。
お母さんのこと、救ってあげられないと思うよ。」
「問題って?」
ユナは、深く息を吸って、そして、決心したように言った。
「お兄ちゃんさあ・・・・・いじめられてるよね。」
( ̄□ ̄;)ガーン・・・・・
カケルは、ギクリとした。
顔から、血の気が引いて行くのがわかる。
「こっちの世界からは、そっちのこと、見えるんだよね。」
カケルはショックで何も言えない。
誰にも・・・誰にも言わずにいたのに・・・
ユナが、見ていたなんて・・・・。
そう、去年の2学期に転入してきたマヒロという少年に、カケルは悩まされている。
1年生の時に、妹を亡くし、母も入院していて・・・という事情をみんな知っていたので、カケルのことを悪く言うクラスメートはいなかった。
ところが、そういったことを一切無視して、マヒロはカケルにつらく当たってきたのだった。
最初は、放課後に軽くからかうだけだった。
「カケルくんは、どこですか? ああ、欠けてるからいませ〜ん!!」
いきなり言われてカッとなったが、カケルは相手にせず、黙って教室を
出て、病院へ向かった。
次の日も、また次の日も、マヒロは同じことを言ってきた。
始めは黙っていた同級生たちも、だんだん何人かがマヒロと一緒になって笑いながらカケルを見るようになった。
「おい! カケル! お前はカケルじゃなくて、カケテルくんじゃねえ
の〜?」
何を言われても、カケルは相手にしなかった。
今までにない経験なのでどうすればいいのかわからなかったし、相談する友だちもいなかった。
そして何よりも、誰ともケンカをしたくなかったのだ。
そのうちに、飽きてやめてくれるだろう・・・。
そう願ったカケルだったが、予想に反して日に日にひどくなる一方だった。
「おい!カケル!いい加減、欠けたらどうだ? カケタくん!」
先生がいない時を見計らって、名前のことをからかう。
カケルの名前の由来は、自由自在に時空さえも超えて天かけるように・・
そんな願いをこめて、両親がつけてくれたものだ。
カケルは唇をかんでこみあげる怒りを飲み込んだ。
「やめなさいよ!! カケルくんの名前は、そんな意味じゃないわよ!」
本宮マミがマヒロを睨むが、 (`Д´)
「へえ〜、何だよ お前カケタが好きなのか?」
そう返されて引き下がるしかなかった。
マヒロは今や、完全にクラスを支配し、天下を取ったように勝ち誇っていた。
それからはすれ違いざまに
「早く カケロよ!」
と耳元でささやきながら、肘で胸をつついたり・・・という暴力もふるい始め教科書を開くと「死ね!! カケロ!!」などとマジックで殴り書きがしてあったりと、どんどんエスカレートしているのだ。
マヒロの、人を見下したような冷たい視線と、クラスのあちこちから聞こえる笑い声・・・。
いっそ、本当にこの世からいなくなろうか・・・そんな気持ちにさえ
なってくるのだった。
「お兄ちゃん、あの人がなぜ転校してきたか知ってる?
おの人、前の学校でいじめられてたの。名前のことで。」
マヒロが・・・いじめられていた?
名前のことで!!
「あの人、自分がされてたことをお兄ちゃんにしているのよ。
そんなことしても何の解決にもならないのに。ペナルティーが増えるだけ
なのに・・」
「ペナルティー?」
「そう。人の心を傷つけると自分の心は相手の痛みと、自分の罪の重さで
傷ついてくもりを作るの。黒くくもった分だけ心は重くなる・・。
その上、人を傷つけてスカッとしたいって思う悪い霊を引き寄せて、もっ ともっと悪いことをさせようとするの。」
「マヒロは・・・?」
「残念ながらたくさん憑いているわ。周りの人たちにも。」
そうなんだ・・・教室全体が暗く重苦しいのは、気のせいじゃない?
「お兄ちゃん! 黙ってたらますますひどくなるだけよ。」
ユナにきっぱりとまっすぐに見据えられて、カケルは視線を下に落とした。
「お兄ちゃんは、欠けていいはずがないわ!あたしの大事な・・
大事な・・大好きなお兄ちゃんなんだから!!」
ユナ! ユナが泣いている。 こんな情けない自分のために!
「自殺した魂は、自分が死んだことがわからずに、何度も何度も・・
たとえば飛び降りた人は、何度も同じ所から飛び降りるの。
死んでも命があることを知らないから。
終わりにしようと思っていたのに、苦しみにずっとずーーっと囚われたまま
になるの。
そんな惨めなユウレイになってしまうの。
だから、いなくなろうなんて、思わないで!!」
思わず知らず、カケルの目から涙があふれた。
「逃げてはいけない!!」
心の中から、強い声が響いた。
「負けないで! お兄ちゃん!!」
ユナの熱い思いが、じんじん伝わってくる。
それは、カケルの心の奥に無理やり押し込まれてホコリだらけになっていた
勇気を思い出させて、力を与えてくれた。
学校と美紗子のいる病院に通う日々の中で、カケルが失っていたもの・・。
それは、自分と自分の周りを変えて行こうとする、勇気だったのだ。
「わかった。 ユナ、何とかする。」
カケルは、ユナをまっすぐに見つめた。
ユナも涙の中で、微笑んでうなづいた・・・・。
ぶ・・ぶえ〜ん・・ぶあぁぁぁ〜ん!!
突然、耳のそばで大きな音がして、カケルは目が覚めた。
そこは、ベッドの上で、その音の正体は・・・・・。
「ケルン!!」
ケルンが、顔中を横長のバツ印にして、おいおい泣いていたのだ。
草の匂いと風が心地いい。
そしてまた、いきなり目の前にユナが現れた。
ルビー2号を通しての壁の中のユナは、街で見かける同級生の女の子たちと
同じような服を着ている。
けれども、草原で会うユナは、白いワンピースを着ている。
「お兄ちゃんの中のイメージでしょ、これは。」
カケルが何も言っていないのに、すねたようにユナが言った。
そういえば・・・月の光の中で会った、あの時のユナのイメージ・・。
「あ・・うん・・そ、そうかな・・・。」
ユナは、肩をすくめた。
「ま、いいけどね、たまには。」
別に、ボクに合わせなくったって、好きな格好をすればいいじゃないかと
カケルは思った。
「そう? じゃ、私の好きにするわよ。」
また口に出して言わないのに、ユナは答えた。
そしてあっという間に、鮮やかな青いTシャツの上に白いレースのカーディガン、デニムのキラキラした刺繍のついたスカート、といった姿になった。
「ジャーーーン!! どうかしら?」
カケルはあっけにとられ、口をポカンと開けたまま突っ立っていた。
「お兄ちゃん、大丈夫? こっちの世界では、思っていることも全部
わかるの。心の中までガラス張りなのよ。」
えっ、まじ? ( ̄O ̄;)
聞いてないよ〜!!
「で、でも・・・ユナのことはわからないけど?」
「お兄ちゃんは、あっちの世界の人だから。」
ああ、そうですか! (`Д´)
「自分が考えていることは、相手にはわからないって思っているから。」
ここに来るといちいち、調子が狂うよ〜!!
あ!これも聞こえてるんだっけ?
えと・・え〜と・・・・
こんがらがっているカケルの心の声には今度は答えず、ユナは大きな木の
そばに、カケルの先に立って歩いて行く。
すると、いきなり白いテーブルとイスが2つ現れて、ユナがそのひとつのイスにすわり、もうひとつをカケルにすすめた。
「ここでないと、ゆっくり話せないから。通信はすぐ切らなくちゃならな いでしょう? 地上の悪想念は危険だし、規制もきびしいのよ。」
「規制とかあるんだ・・ユナ、大丈夫なの?」
「うん。だからほんの短時間。それでも直接話したいから・・。
大変なのよ〜、地上の時間をつかまえるのって。」
そんな大変な思いをして、ユナは通信を送っているのか。
そこまでして、直接話したいと思っているのか。
カケルは、胸があたたかくなった。
「でさ。お兄ちゃん、これからどうしたいの? 」
「これから? うん・・ボク、行ってみたいんだ、その月の姫神社に。」
するとユナは、真剣な表情になってカケルを見つめた。
「その前にさ、お兄ちゃんには、するべきことがあるよね。」
え? ( ̄O ̄;)
「その問題を解決しないと、お兄ちゃんは前に進めない。
お母さんのこと、救ってあげられないと思うよ。」
「問題って?」
ユナは、深く息を吸って、そして、決心したように言った。
「お兄ちゃんさあ・・・・・いじめられてるよね。」
( ̄□ ̄;)ガーン・・・・・
カケルは、ギクリとした。
顔から、血の気が引いて行くのがわかる。
「こっちの世界からは、そっちのこと、見えるんだよね。」
カケルはショックで何も言えない。
誰にも・・・誰にも言わずにいたのに・・・
ユナが、見ていたなんて・・・・。
そう、去年の2学期に転入してきたマヒロという少年に、カケルは悩まされている。
1年生の時に、妹を亡くし、母も入院していて・・・という事情をみんな知っていたので、カケルのことを悪く言うクラスメートはいなかった。
ところが、そういったことを一切無視して、マヒロはカケルにつらく当たってきたのだった。
最初は、放課後に軽くからかうだけだった。
「カケルくんは、どこですか? ああ、欠けてるからいませ〜ん!!」
いきなり言われてカッとなったが、カケルは相手にせず、黙って教室を
出て、病院へ向かった。
次の日も、また次の日も、マヒロは同じことを言ってきた。
始めは黙っていた同級生たちも、だんだん何人かがマヒロと一緒になって笑いながらカケルを見るようになった。
「おい! カケル! お前はカケルじゃなくて、カケテルくんじゃねえ
の〜?」
何を言われても、カケルは相手にしなかった。
今までにない経験なのでどうすればいいのかわからなかったし、相談する友だちもいなかった。
そして何よりも、誰ともケンカをしたくなかったのだ。
そのうちに、飽きてやめてくれるだろう・・・。
そう願ったカケルだったが、予想に反して日に日にひどくなる一方だった。
「おい!カケル!いい加減、欠けたらどうだ? カケタくん!」
先生がいない時を見計らって、名前のことをからかう。
カケルの名前の由来は、自由自在に時空さえも超えて天かけるように・・
そんな願いをこめて、両親がつけてくれたものだ。
カケルは唇をかんでこみあげる怒りを飲み込んだ。
「やめなさいよ!! カケルくんの名前は、そんな意味じゃないわよ!」
本宮マミがマヒロを睨むが、 (`Д´)
「へえ〜、何だよ お前カケタが好きなのか?」
そう返されて引き下がるしかなかった。
マヒロは今や、完全にクラスを支配し、天下を取ったように勝ち誇っていた。
それからはすれ違いざまに
「早く カケロよ!」
と耳元でささやきながら、肘で胸をつついたり・・・という暴力もふるい始め教科書を開くと「死ね!! カケロ!!」などとマジックで殴り書きがしてあったりと、どんどんエスカレートしているのだ。
マヒロの、人を見下したような冷たい視線と、クラスのあちこちから聞こえる笑い声・・・。
いっそ、本当にこの世からいなくなろうか・・・そんな気持ちにさえ
なってくるのだった。
「お兄ちゃん、あの人がなぜ転校してきたか知ってる?
おの人、前の学校でいじめられてたの。名前のことで。」
マヒロが・・・いじめられていた?
名前のことで!!
「あの人、自分がされてたことをお兄ちゃんにしているのよ。
そんなことしても何の解決にもならないのに。ペナルティーが増えるだけ
なのに・・」
「ペナルティー?」
「そう。人の心を傷つけると自分の心は相手の痛みと、自分の罪の重さで
傷ついてくもりを作るの。黒くくもった分だけ心は重くなる・・。
その上、人を傷つけてスカッとしたいって思う悪い霊を引き寄せて、もっ ともっと悪いことをさせようとするの。」
「マヒロは・・・?」
「残念ながらたくさん憑いているわ。周りの人たちにも。」
そうなんだ・・・教室全体が暗く重苦しいのは、気のせいじゃない?
「お兄ちゃん! 黙ってたらますますひどくなるだけよ。」
ユナにきっぱりとまっすぐに見据えられて、カケルは視線を下に落とした。
「お兄ちゃんは、欠けていいはずがないわ!あたしの大事な・・
大事な・・大好きなお兄ちゃんなんだから!!」
ユナ! ユナが泣いている。 こんな情けない自分のために!
「自殺した魂は、自分が死んだことがわからずに、何度も何度も・・
たとえば飛び降りた人は、何度も同じ所から飛び降りるの。
死んでも命があることを知らないから。
終わりにしようと思っていたのに、苦しみにずっとずーーっと囚われたまま
になるの。
そんな惨めなユウレイになってしまうの。
だから、いなくなろうなんて、思わないで!!」
思わず知らず、カケルの目から涙があふれた。
「逃げてはいけない!!」
心の中から、強い声が響いた。
「負けないで! お兄ちゃん!!」
ユナの熱い思いが、じんじん伝わってくる。
それは、カケルの心の奥に無理やり押し込まれてホコリだらけになっていた
勇気を思い出させて、力を与えてくれた。
学校と美紗子のいる病院に通う日々の中で、カケルが失っていたもの・・。
それは、自分と自分の周りを変えて行こうとする、勇気だったのだ。
「わかった。 ユナ、何とかする。」
カケルは、ユナをまっすぐに見つめた。
ユナも涙の中で、微笑んでうなづいた・・・・。
ぶ・・ぶえ〜ん・・ぶあぁぁぁ〜ん!!
突然、耳のそばで大きな音がして、カケルは目が覚めた。
そこは、ベッドの上で、その音の正体は・・・・・。
「ケルン!!」
ケルンが、顔中を横長のバツ印にして、おいおい泣いていたのだ。
* テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学 *
08/05.Sun17:35
「どうだった?」
白ウサギのルビー2号を通して、壁の中のユナが聞いた。
「いや〜別に。またあの月の鳥のお話を読んで、着替えを渡してきた
だけだよ。」
「ミーチャの様子は?」
「うん・・・何も言わないからわからないんだ。」
「そう。」
ユナはそれでブチッと通信を切った。
カケルとケルンはもう慣れたもので驚くことはなくなった。
「カケルお兄ちゃん、ごはんだって。」
下から、かわいいミーチャの声がする。
ミーチャは、父がいない間は、祖母の幸子とカケルの中で生き生きと暮らしている。
「今行くよ。」
カケルはミーチャにそう答えると、ケルンを振り返った。
「何か聞きだせるかもしれない。」
「ハイ! がんばって下さい、カケルさんっ。」
ケルンは、顔中をひとつのバッテンににして、カケルに向かって敬礼した。
ぷっと吹き出しながら、カケルは階段を下りた。
「美紗子は元気だった?」
「うん、元気だったよ。」
いつものように繰り返される短い会話。
いつもはここで終わるのだが。
「あのお話ね、ミーチャ知ってる。」
突然、ミーチャがニコニコして言った。
「あのお話って何?ミーチャ。」
幸子が最後のみそ汁のお椀を食卓に置きながら、ミーチャを振り返る。
「月の鳥さんのお話だよ。」
「月の鳥・・・ねえ・・・。」
カケルは、持っていた箸をバチンと食卓に置いて身を乗り出した。
「母さんが気に入ってて、毎日読んでるお話のことだよ。ある国に囚われ ていたお姫様が、ここから出して下さいって月にお祈りしたら、鳥になって そこから抜け出したっていう話なんだ。」
「うん!( ^-^ ) ミーチャ知ってるよ。月の鳥さん。」
え?
知ってる?
ミーチャが・・・
月の鳥を・・・?
「うーーーんと、そうだよ!思い出した!月の姫神社だわ!」
「月の姫・・・神社ぁ? 何? それ。」
カケルは幸子の顔をを穴のあくほど見つめた。
「美紗子が小さい頃・・小学校に行く前くらいまで住んでた所にあった、 神社のことよ。そこのえーっと誰だったっけ?」
「めぐちゃんだよ!」
「そうそう!めぐみちゃんとよく遊んでいたわねえ。」
「うん!裏のお池でよく遊ぶんだよ。」
ミーチャは、嬉しそうにニコニコしている。
「昔ね、その神社に住んでいた娘さんが、その村に飢饉が続いた時にね、 月の神様にお願いをして何日も何日も飲まず食わずで祈り続けていたの。
そしたらある夜に、金色に輝く大きな鳥が現れたの。村の上空を金色の光の 粉をふりまきながら飛んでいたそうよ。鳥が消えた瞬間から雨が降り出して 村は助かったの。その後その娘さんは、何度も村を救ってくれたの。
娘さんはいつしか、月の姫と言われるようになって、その神社は月の姫神社 と呼ばれるようになった・・・っていう伝説があるの。」
「ふ〜ん・・・」
カケルは、胸がわくわくした。
ミーチャの記憶が、月の鳥と深くかかわっていたのだ!
白ウサギのルビー2号を通して、壁の中のユナが聞いた。
「いや〜別に。またあの月の鳥のお話を読んで、着替えを渡してきた
だけだよ。」
「ミーチャの様子は?」
「うん・・・何も言わないからわからないんだ。」
「そう。」
ユナはそれでブチッと通信を切った。
カケルとケルンはもう慣れたもので驚くことはなくなった。
「カケルお兄ちゃん、ごはんだって。」
下から、かわいいミーチャの声がする。
ミーチャは、父がいない間は、祖母の幸子とカケルの中で生き生きと暮らしている。
「今行くよ。」
カケルはミーチャにそう答えると、ケルンを振り返った。
「何か聞きだせるかもしれない。」
「ハイ! がんばって下さい、カケルさんっ。」
ケルンは、顔中をひとつのバッテンににして、カケルに向かって敬礼した。
ぷっと吹き出しながら、カケルは階段を下りた。
「美紗子は元気だった?」
「うん、元気だったよ。」
いつものように繰り返される短い会話。
いつもはここで終わるのだが。
「あのお話ね、ミーチャ知ってる。」
突然、ミーチャがニコニコして言った。
「あのお話って何?ミーチャ。」
幸子が最後のみそ汁のお椀を食卓に置きながら、ミーチャを振り返る。
「月の鳥さんのお話だよ。」
「月の鳥・・・ねえ・・・。」
カケルは、持っていた箸をバチンと食卓に置いて身を乗り出した。
「母さんが気に入ってて、毎日読んでるお話のことだよ。ある国に囚われ ていたお姫様が、ここから出して下さいって月にお祈りしたら、鳥になって そこから抜け出したっていう話なんだ。」
「うん!( ^-^ ) ミーチャ知ってるよ。月の鳥さん。」
え?
知ってる?
ミーチャが・・・
月の鳥を・・・?
「うーーーんと、そうだよ!思い出した!月の姫神社だわ!」
「月の姫・・・神社ぁ? 何? それ。」
カケルは幸子の顔をを穴のあくほど見つめた。
「美紗子が小さい頃・・小学校に行く前くらいまで住んでた所にあった、 神社のことよ。そこのえーっと誰だったっけ?」
「めぐちゃんだよ!」
「そうそう!めぐみちゃんとよく遊んでいたわねえ。」
「うん!裏のお池でよく遊ぶんだよ。」
ミーチャは、嬉しそうにニコニコしている。
「昔ね、その神社に住んでいた娘さんが、その村に飢饉が続いた時にね、 月の神様にお願いをして何日も何日も飲まず食わずで祈り続けていたの。
そしたらある夜に、金色に輝く大きな鳥が現れたの。村の上空を金色の光の 粉をふりまきながら飛んでいたそうよ。鳥が消えた瞬間から雨が降り出して 村は助かったの。その後その娘さんは、何度も村を救ってくれたの。
娘さんはいつしか、月の姫と言われるようになって、その神社は月の姫神社 と呼ばれるようになった・・・っていう伝説があるの。」
「ふ〜ん・・・」
カケルは、胸がわくわくした。
ミーチャの記憶が、月の鳥と深くかかわっていたのだ!
* テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学 *
08/04.Sat15:37
ミーチャを外に連れ出すのに、思いのほか手間取った。
恥ずかしがって、なかなかウンと言ってくれなかったからだ。
外に出ると言っても、その姿は他の人には見えないのだが・・・。
反対にカケルの方が、人目をひいている。
それは、あちこちキョロキョロしてなかなか前に歩いてくれないミーチャを
何とかなだめて歩かせようとするカケルの姿が、怪しい行動に見えるからだった。
(これなら、見えていた方がずっと楽だったな・・・)
なるべくヘンな行動に見えないよう、ミーチャに合わせてゆっくり歩きながらカケルは冷や汗をかいた。
ド ン !!
いきなり何かにぶつかって、カケルはよろけて尻もちをついた。
「あ、ごめんなさい。大丈夫?ケガはない?」
ぶつかったのは女の人で、カケルの手を引っ張って立たせてくれた。
「あわてていて前を見ていなかったものだから。」
言いながら女の人は、カケルの後ろにいるミーチャをじっと見つめた。
「その子・・・妹・・さん?」
カケルはギクリとした。
「あ・・いいえ・・えと・・見、見えるんですか?」
女の人は、肩をすくめて
「ちょっとだけね、急いでいるからごめんなさいね。」
そう、早口でそう言うと、商店街の方へ消えて行った。
カケルは、呆然とその後姿を見送った。
・・・・世の中には、そういう人もいるものなんだな・・・。
ぼんやりとそう思った。
恥ずかしがって、なかなかウンと言ってくれなかったからだ。
外に出ると言っても、その姿は他の人には見えないのだが・・・。
反対にカケルの方が、人目をひいている。
それは、あちこちキョロキョロしてなかなか前に歩いてくれないミーチャを
何とかなだめて歩かせようとするカケルの姿が、怪しい行動に見えるからだった。
(これなら、見えていた方がずっと楽だったな・・・)
なるべくヘンな行動に見えないよう、ミーチャに合わせてゆっくり歩きながらカケルは冷や汗をかいた。
ド ン !!
いきなり何かにぶつかって、カケルはよろけて尻もちをついた。
「あ、ごめんなさい。大丈夫?ケガはない?」
ぶつかったのは女の人で、カケルの手を引っ張って立たせてくれた。
「あわてていて前を見ていなかったものだから。」
言いながら女の人は、カケルの後ろにいるミーチャをじっと見つめた。
「その子・・・妹・・さん?」
カケルはギクリとした。
「あ・・いいえ・・えと・・見、見えるんですか?」
女の人は、肩をすくめて
「ちょっとだけね、急いでいるからごめんなさいね。」
そう、早口でそう言うと、商店街の方へ消えて行った。
カケルは、呆然とその後姿を見送った。
・・・・世の中には、そういう人もいるものなんだな・・・。
ぼんやりとそう思った。
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