「お兄ちゃんに、お願いがあるの」
ユナは、今度はカケルを見つめて言った。
「あたしは、もうすぐリーデと光の世界に還るの。」
「えっ!?」
でもすぐに、ユナが笑顔になった。
「もう、苦しくなることはないの。あたしがいなくなるわけでもないの
よ。ただ・・・」
そこで、ユナの言葉はふいに途切れた。
「ただ、あなたやお母さんやお父さんに、会えなくなるの。」
リーデが言葉を続けた。
ユナがうなづく。
「魂が体から離れると、この世界の人の目には見えなくなるだけで、ユ ナはずっと行き続けているわ。生きる場所が、変わるだけなの。」
「生きる場所が?」
リーデは、にっこり笑って、ユナの頭を愛しそうになでた。
「人は、数え切れないくらい生まれ変わっているの。その中には、病気 の体で生まれるっていう、つらい経験を選ぶこともあるの。それはとてもつ らいことだけど、その人と周りの人にとってつらさを乗り越えるっていう体 験が、お互いの魂を成長させるの。」
「ユナは、そのために生まれてきたの?」
カケルは、最初に感じた疑問をリーデにぶつけた。
「そうよ。ユナが決めたこと。ユナは、病気の人の心を知りたいって、 痛みを知りたいって。そうして生まれ変わったの。」
「何で、そんなことをリーデは知っているの?」
「私? 私はユナの守護天使よ。ユナのそばにいて、ユナをずっと見守 ってきたの。あなたにも、お母さんにもすべての人に守護天使はいるのよ」 「ふーん・・」
何だかよくわからなくて、信じられなくて、カケルはユナを見つめた。
ユナは、唇をかんで目をギュッと閉じていた。
ケルンが、短い手でユナの腕を心配そうにさすっている。
いのちのうたは、ずっと続いていた。
光たちが、ゆっくりと動く。ひとりひとりの心に光を届けようとするかのように。優しく、淡い色は、ほんのりとあたたかくて、心にぬくもりが広がった。 やがて、ユナが顔を上げた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんも絶対に光の世界に還ってきてね。そしたら また会えるから。」
「ボクが、光の世界に?」
「うん。」
ユナの瞳から、月の光に染まった涙がポロリとこぼれ落ちた。
「この世界はね、試験でもあるのよ。」
リーデが、カケルの両肩に手をそっとおいた。
「どんなことになっても、最後はまわりの人に感謝できるか、自分の
ことを理解して、反省できるか。それが、すべてを光に変えるということ。 それができた人は、光の世界に還って、また生まれ変わることができる。
でも、人を恨んで人のせいにばかりして終わった人は、闇の世界に行くの。 そして反省できるまで、ずーーっとそこにいることになるの。
ユナは、カケルがちゃんと正しく生きて、光の世界に還ってきてほしいと
願っているの。そしたらまた会えるから。」
ユナが、にっこり笑ってうなづいて、ケルンを両手で抱きしめた。
ケルンは、ふにゃあと笑った。その顔がおかしくて、カケルも思わず笑顔になった。
| 月の光 第四章 カケルのトラックバックURL |


