2007-08-09(Thu)

MoonBird 12

  いきなり、カケルはまた草原にいた。
草の匂いと風が心地いい。
そしてまた、いきなり目の前にユナが現れた。
ルビー2号を通しての壁の中のユナは、街で見かける同級生の女の子たちと
同じような服を着ている。
けれども、草原で会うユナは、白いワンピースを着ている。
  「お兄ちゃんの中のイメージでしょ、これは。」
カケルが何も言っていないのに、すねたようにユナが言った。
そういえば・・・月の光の中で会った、あの時のユナのイメージ・・。
  「あ・・うん・・そ、そうかな・・・。」
ユナは、肩をすくめた。
  「ま、いいけどね、たまには。」
別に、ボクに合わせなくったって、好きな格好をすればいいじゃないかと
カケルは思った。
  「そう? じゃ、私の好きにするわよ。」
また口に出して言わないのに、ユナは答えた。
そしてあっという間に、鮮やかな青いTシャツの上に白いレースのカーディガン、デニムのキラキラした刺繍のついたスカート、といった姿になった。
  「ジャーーーン!! どうかしら?」
カケルはあっけにとられ、口をポカンと開けたまま突っ立っていた。

  「お兄ちゃん、大丈夫? こっちの世界では、思っていることも全部
 わかるの。心の中までガラス張りなのよ。」

    えっ、まじ?  ( ̄O ̄;)
    聞いてないよ〜!!

  「で、でも・・・ユナのことはわからないけど?」
  「お兄ちゃんは、あっちの世界の人だから。」
 
    ああ、そうですか!  (`Д´)

  「自分が考えていることは、相手にはわからないって思っているから。」

    ここに来るといちいち、調子が狂うよ〜!!
   あ!これも聞こえてるんだっけ?
   えと・・え〜と・・・・

 こんがらがっているカケルの心の声には今度は答えず、ユナは大きな木の
そばに、カケルの先に立って歩いて行く。
 すると、いきなり白いテーブルとイスが2つ現れて、ユナがそのひとつのイスにすわり、もうひとつをカケルにすすめた。

  「ここでないと、ゆっくり話せないから。通信はすぐ切らなくちゃならな いでしょう? 地上の悪想念は危険だし、規制もきびしいのよ。」

  「規制とかあるんだ・・ユナ、大丈夫なの?」

  「うん。だからほんの短時間。それでも直接話したいから・・。
 大変なのよ〜、地上の時間をつかまえるのって。」

 そんな大変な思いをして、ユナは通信を送っているのか。
 そこまでして、直接話したいと思っているのか。
 カケルは、胸があたたかくなった。

  「でさ。お兄ちゃん、これからどうしたいの? 」
  「これから? うん・・ボク、行ってみたいんだ、その月の姫神社に。」

 するとユナは、真剣な表情になってカケルを見つめた。
  「その前にさ、お兄ちゃんには、するべきことがあるよね。」
   
     え?  ( ̄O ̄;)

  「その問題を解決しないと、お兄ちゃんは前に進めない。
  お母さんのこと、救ってあげられないと思うよ。」

  「問題って?」

  ユナは、深く息を吸って、そして、決心したように言った。

  「お兄ちゃんさあ・・・・・いじめられてるよね。」

      ( ̄□ ̄;)ガーン・・・・・

  カケルは、ギクリとした。
顔から、血の気が引いて行くのがわかる。

  「こっちの世界からは、そっちのこと、見えるんだよね。」
カケルはショックで何も言えない。
誰にも・・・誰にも言わずにいたのに・・・
  ユナが、見ていたなんて・・・・。 


  そう、去年の2学期に転入してきたマヒロという少年に、カケルは悩まされている。
1年生の時に、妹を亡くし、母も入院していて・・・という事情をみんな知っていたので、カケルのことを悪く言うクラスメートはいなかった。

 ところが、そういったことを一切無視して、マヒロはカケルにつらく当たってきたのだった。

 最初は、放課後に軽くからかうだけだった。

 「カケルくんは、どこですか? ああ、欠けてるからいませ〜ん!!」
いきなり言われてカッとなったが、カケルは相手にせず、黙って教室を
出て、病院へ向かった。

 次の日も、また次の日も、マヒロは同じことを言ってきた。
始めは黙っていた同級生たちも、だんだん何人かがマヒロと一緒になって笑いながらカケルを見るようになった。

  「おい! カケル! お前はカケルじゃなくて、カケテルくんじゃねえ
   の〜?」
 何を言われても、カケルは相手にしなかった。
今までにない経験なのでどうすればいいのかわからなかったし、相談する友だちもいなかった。
そして何よりも、誰ともケンカをしたくなかったのだ。

 そのうちに、飽きてやめてくれるだろう・・・。
そう願ったカケルだったが、予想に反して日に日にひどくなる一方だった。

  「おい!カケル!いい加減、欠けたらどうだ? カケタくん!」
先生がいない時を見計らって、名前のことをからかう。

 カケルの名前の由来は、自由自在に時空さえも超えて天かけるように・・
そんな願いをこめて、両親がつけてくれたものだ。
カケルは唇をかんでこみあげる怒りを飲み込んだ。

  「やめなさいよ!! カケルくんの名前は、そんな意味じゃないわよ!」
本宮マミがマヒロを睨むが、 (`Д´)

  「へえ〜、何だよ お前カケタが好きなのか?」
そう返されて引き下がるしかなかった。
マヒロは今や、完全にクラスを支配し、天下を取ったように勝ち誇っていた。
 
 それからはすれ違いざまに
  「早く カケロよ!」
と耳元でささやきながら、肘で胸をつついたり・・・という暴力もふるい始め教科書を開くと「死ね!! カケロ!!」などとマジックで殴り書きがしてあったりと、どんどんエスカレートしているのだ。

 マヒロの、人を見下したような冷たい視線と、クラスのあちこちから聞こえる笑い声・・・。
 いっそ、本当にこの世からいなくなろうか・・・そんな気持ちにさえ
なってくるのだった。

  「お兄ちゃん、あの人がなぜ転校してきたか知ってる?
   おの人、前の学校でいじめられてたの。名前のことで。」

    マヒロが・・・いじめられていた? 
    名前のことで!!

  「あの人、自分がされてたことをお兄ちゃんにしているのよ。
 そんなことしても何の解決にもならないのに。ペナルティーが増えるだけ
 なのに・・」

  「ペナルティー?」

  「そう。人の心を傷つけると自分の心は相手の痛みと、自分の罪の重さで
  傷ついてくもりを作るの。黒くくもった分だけ心は重くなる・・。
  その上、人を傷つけてスカッとしたいって思う悪い霊を引き寄せて、もっ  ともっと悪いことをさせようとするの。」

  「マヒロは・・・?」

  「残念ながらたくさん憑いているわ。周りの人たちにも。」

 そうなんだ・・・教室全体が暗く重苦しいのは、気のせいじゃない?

  「お兄ちゃん! 黙ってたらますますひどくなるだけよ。」
 ユナにきっぱりとまっすぐに見据えられて、カケルは視線を下に落とした。

  「お兄ちゃんは、欠けていいはずがないわ!あたしの大事な・・
  大事な・・大好きなお兄ちゃんなんだから!!」

 ユナ! ユナが泣いている。  こんな情けない自分のために!

  「自殺した魂は、自分が死んだことがわからずに、何度も何度も・・
 たとえば飛び降りた人は、何度も同じ所から飛び降りるの。
 死んでも命があることを知らないから。
 終わりにしようと思っていたのに、苦しみにずっとずーーっと囚われたまま
 になるの。
 そんな惨めなユウレイになってしまうの。
 だから、いなくなろうなんて、思わないで!!」

 思わず知らず、カケルの目から涙があふれた。

  「逃げてはいけない!!」

 心の中から、強い声が響いた。

 「負けないで! お兄ちゃん!!」

 ユナの熱い思いが、じんじん伝わってくる。
それは、カケルの心の奥に無理やり押し込まれてホコリだらけになっていた
勇気を思い出させて、力を与えてくれた。

 学校と美紗子のいる病院に通う日々の中で、カケルが失っていたもの・・。
それは、自分と自分の周りを変えて行こうとする、勇気だったのだ。

 「わかった。 ユナ、何とかする。」

 カケルは、ユナをまっすぐに見つめた。
ユナも涙の中で、微笑んでうなづいた・・・・。



 ぶ・・ぶえ〜ん・・ぶあぁぁぁ〜ん!! 

 突然、耳のそばで大きな音がして、カケルは目が覚めた。

 そこは、ベッドの上で、その音の正体は・・・・・。

   「ケルン!!」
ケルンが、顔中を横長のバツ印にして、おいおい泣いていたのだ。    

  

   
  

theme : 児童文学・童話・絵本 - genre : 小説・文学

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Author:まりあちゃも
白うさぎ・・40代に突入! 元気に行きますよっ!
黒うさぎ・・ガラスの腰が悩みのタネ
そら色うさぎ・・中1 将来は絵本作家!?
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モモ色うさぎ・・小1 気まぐれな元気娘です♪ 
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