2006-02-27(Mon)

月の光 第三章  いのちのうた

  ユナも、今、幸せなんだ・・・そう思うとカケルは心が軽くなった。
  「さあ、またユナを探さなくちゃ・・・」
  「はいっ! ユナさんはどこでしょう!」
と、短い足で胸を張るケルンがおかしくて、カケルはまた大笑いしそうになるのを必死でこらえた。
 視線を、ケルンからユナが走り去った方向へ移したカケルは、はっと息を呑んだ。
 カケルの首まで伸びた黄金色の草から、大輪の花が咲いていたのだ。それは
ちょうど、カケルのいる場所からてんてんと続いて一本の道ができている。
花が、ユナのいる場所を教えてくれているのだ! そう感じたカケルは、花を
たどって黄金色の草を掻き分けながら進み始めた。
 花は、カケルの頭ひとつぶん上の高さで、ヒマワリに似ている。けれども、
ひとつひとつ、色が違っていた。いや、ひとつの花でさえ、絶えず色が変化
していた。あるものは、赤からピンク、オレンジから黄色。またあるものは
紫から青、水色から黄緑へ。立ち止まってじっと見つめていたいのをこらえて
カケルはユナを探して歩き続けた。
 しかし、ユナも相当動いているらしく、なかなかたどり着かない。
花はユナのいる道しるべとなって、次から次へ咲いて行く。
長い間歩き回って、黄金色の草原はヒマワリの花畑になった。
 気が付くと、チョウたちが花のまわりを飛んでいた。花の色のうつろいに羽の色が変化して、とてもきれいだ。
  「ユナはどこか知らない?」
チョウたちに話しかけると、それぞれがパッと花から離れ、ある方向をめざして飛び始めた。通りすがる花の色に、羽の色を染めかえながら。
 やがてチョウたちは、はじめにカケルとケルンを黄金のじゅうたんから下ろした、大きな木へたどり着いた。
  「ここ・・なの?」
チョウは、ふわりと上へ上へカケルの視線を導く・・・すると木の枝にすわったユナが、手を振っているのが見えた。
  「カケルさあぁーーん、待ってくださいよお! おうわぁー!」
ケルンはつまずきかけた所をチョウたちに支えられ、そのまま木の枝にいる
ユナの元へ運ばれていった。
  「お兄ちゃんも、早く登ってきて!」
また、とびっきりの笑顔でユナが手を振る。
木の幹に手をかけると、また黄金色の草がするすると伸びて、あっという間に
ユナのいる枝に着いた。
  「ありがとう」
カケルが元に戻ろうとする草をそっと握ると、黄金色の草は一瞬、ほうっと
あたたかく光った。
カケルの心も、ほうっとあたたかくなった。

theme : 児童文学・童話・絵本 - genre : 小説・文学

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